高血圧や動脈硬化を予防するためにカルシウムの摂取を! |
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日本は食生活が豊かなのですが、それでも不足している栄養素があります。
それがカルシウムなのですが、日本人に必要とされるカルシウム量は、成人の場合で1日600mgです。
ところが、国民栄養調査では、いつの調査でもその数値に達していなくて、2002年度の場合でも、平均摂取量は546mgに過ぎません。
とくに、20代は464mg、30代は475mg、40代は503mg、50代は548mgと、働き盛りの若い年代の不足が目立ちます。
必要摂取量の600mgは、決して多い数値ではなく、それで十分という量ではありません。
諸外国では、1000mg以上に設定する国も多く、日本は数値そのものの設定が低めなのです。
その低めの600mgさえ満たしていないわけですから、かなり深刻なカルシウム不足だと言えるでしょう。
カルシウム不足は、骨の健康被害である、骨粗相症や骨折などの原因になることは知られている事実です。
その半面、カルシウム不足が高血圧や動脈硬化などの原因となっていることはあまり知られていませんが、カルシウムの働きは骨を作ることだけでなく、血管などの細胞の活動に大きな影響を及ぼしているのです。
そのため、カルシウムが不足すると、血圧の上昇や血管の老化を招きやすいのです。
日本人の食生活が安定してきて、エネルギー摂取量がピークに達した1970年度のカルシウムの平均摂取量は536mgですが、その後もずーっと必要量を下回っています。
因みに、現在ほど食料事情が良くなかった1950年度は、276mg、1960年度は389mgと極めて低い数値になっていました。
カルシウム・パラドックスが血圧を上昇させる
カルシウム・パラドックス(逆説)と言う言葉がありますが、カルシウムが不足すると、血液中のカルシウムが増えるという不思議な現象のことです。
なぜそんなことが起きるのかと言えば、体内のカルシウムの大半は、骨に蓄積されています。
残りの1%程度が血管などの細胞に使われます。
ただ、骨以外の細胞で使われるカルシウムはほんの微量ですが、心臓の筋肉や脳の神経細胞の働きをコントロールするなど、命に関わる重要な働きをしています。
そのために、カルシウム摂取量が不足すると、身体が危機感を覚え、副甲状腺ホルモンを分泌させて骨からカルシウムを取り出し、体内の細胞に補給します。
それが常にカルシウム不足が続くと、骨からの供給がドンドン増加し、その結果、血液中にカルシウムが増え、カルシウム濃度が高くなってしまいます。
つまり、カルシウム・パラドックスは生命維持には欠かせない現象なのですが、問題なのはその後に起こるマイナス要因なのです。
血液中のカルシウム濃度が高くなると、カルシウムは血管壁に取り込まれ、壁を収縮します。
血管の壁が収縮すると血液の流れが悪くなり、心臓はより強い力で血液を送り出そうとしますが、その結果血圧が上昇し、高血圧になってしまうのです。
カルシウム不足は血管系疾患の引き金となる! |
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高血圧の原因の1つに、塩分(ナトリウム)の摂りすぎが言われますが、塩分過多になると喉の渇きなどから水分を多く摂るため血液量が増えます。
その結果、血管壁にかかる圧力が増し、高血圧になるのです。
ところが、それだけで無く、塩分を多く摂るとカルシウムが体外へ多く排出され、カルシウム不足になりやすくなります。
その結果、先ほど書きました、カルシウム・パラドックスが起こり、更なる血圧の上昇が始まるのです。
そのため、高血圧の予防のためには、塩分の摂りすぎに注意することはもちろんのこと、カルシウム不足に注意することが必要です。
カルシウム不足は、更に動脈硬化を招く原因にもなり、血液中のカルシウムが増えると血管壁が硬くなり、血管の内側が傷つきやすくなります。
キズが出来ると、そこにコレステロールや血栓などが付着し、血液の流れが悪くなり、血管そのものももろくなってしまう、いわゆる動脈硬化の状態です。
カルシウム不足は、高血圧や動脈硬化といった血管系疾患の引き金ともいえるでしょう。
カルシウム不足と自覚症状! |
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次にカルシウム不足の症状ですが、カルシウムが不足すると身体にちょっした異変が見られます。
例えば次のような症状ですが、あればカルシウム不足を疑いましょう。
1)まぶたがピクピク痙攣する
2)運動もしていないのに足がつる
3)物忘れをよくする
4)イライラする
1)~2)は、カルシウム不足による、筋肉の活動の低下が原因です。
3)~4)は、脳の神経細胞の働きの低下が原因で起こります。
この場合も、カルシウム・パラドックスが関係しています。
「イライラ」するを例にとると、カルシウム不足は脳の血液中のカルシウム濃度が上がり、脳の神経細胞が旨くコントロールすることができなくなり、イライラの症状がでてきます。
脳の血液中のカルシウム濃度が更に高くなると、痴呆症状を起こすこともあり、脳血管の動脈硬化から脳卒中を引き起こす原因ともなります。
カルシウムは年齢と共に吸収率が悪くなりますから、中高年の場合には摂取量の目標を1000mg程度にし、カルシウムを含む食品を多めにとるようにしましょう。
カルシウムの吸収率を高めるために、ビタミンDの働きが必要なので、イワシなどの青魚類やキノコ類、そして適度の紫外線を浴びでビタミンDの補給を行い、カルシウムの吸収に努めましょう。